第3章 人と人ならざるもの
「別に俺がいなくても、てめぇ独りで大丈夫じゃねぇか」
「うーん……実は、しばらく事情があって、城に閉じこもっていましてね……。そのせいで、魔力が弱まっているんです。物の怪まで相手にできるか疑わしいんです」
「断る」
「うーん……じゃあ、もう仕方ないですねぇ。強硬手段です」
そう呟いたシャドウの魔力が一気に膨れ上がる。
一番近くにいたアスミは、あまりにも強烈な力の勢いに、思わず立ち上がってしまう。
柘榴が息をのんで、シャドウへと手を伸ばした時にはすでに遅く。
ひよりの華奢な体は、壁へと見えない力によって押しつけられ、一切の身動きができなくなる。
「――ッ!」
「てめぇ……っ」
柘榴が、シャドウを射殺さんばかりの目つきで睨みつけるが、銀髪の少年は座ったまま影のある笑みを浮かべる。
「ちょっ、シャドウ!」
アスミがシャドウを止めようとするが、なぜか彼の方へと近づくことができない。
――嘘、バリア的なのが!?
焦りを覚えるアスミだが、どうにもすることもできない。
それだけでなく、シャドウの強すぎる魔力に、自分の体に眠る能力が、ざわりと反応したのを感じる。
――あ、かなりヤバいな。
そんなことを思うが、柘榴の低い声にハッと意識を逸らされる。
「シャドウ……てめぇ……」
人形のような、張り付けた笑みを浮かべたまま、シャドウが再び繰り返す。
「行ってくれますよね?」
「……ちっ……」
――……シャドウ。
今のアスミには、シャドウが知らない人物のように見えた。