第3章 人と人ならざるもの
――え、この人が消したの?
――人っていうか、妖怪か……。
脳内を疑問符で埋め尽くしながら、首をかしげるとシャドウに腕を引っ張られる。
「姫島さん? どうかされました?」
「え……いや、別に」
「気分が悪くなったら、いつでも言って下さいね」
「う、うん……」
とまどいながら首を縦に振ると、頭上からふてくされたような声が降ってきた。
「ほら、中に入るんだったら早くしろって」
「あ、もしかして妬いてます? 私とひよりさんが話してて。嫌ですねぇ。心の狭い男性は嫌われますよ?」
「ちげーよ」
「なら、そんなに怒らないでください。姫島さんが怖がってるじゃないですか」
シャドウは、妖怪王に対して、強張った顔を向けているアスミの肩を引き寄せる。
「あ? あー……悪ぃな」
「珍しく素直に謝りますね。結婚して性格が丸くなったんでしょうか」
「てめぇこそ、別人じゃねぇか」
「まあまあ。それは今は置いといて」
仲がいいのか悪いのか、よくわからない会話をする人外2人。
「皆様、お話は外ではなく中でされたらどうでしょうか?」
ひよりがそうやわらかな声をかけると、柘榴の頬が緩む。
突然の変化に、アスミはぎょっとして目を小さく見開く。
「おう、今行く」
「旦那バカですねぇ。ちょっと気持ち悪いです」
「うるせーよ」
そんな会話をしている柘榴とシャドウを見ながら、アスミは門の方をそっと振り向く。
なんの変哲もない門なのに、ひどく彼女の気持ちを沈みこませていた。