第3章 人と人ならざるもの
「結婚のお祝いをしたいと思いましてね」
「なんだ、だったら早く言えっての」
「いや、言おうとしたら攻撃されたんですけどね」
「そうだったか?」
「……相変わらずですね」
そんな会話をしながら、アスミの方へと近づいていく2人。
アスミは唖然とした顔で立っているしかない。
ちょうどシャドウがアスミの隣に立った時、透明感のある声が妖怪たちの倒れる庭に響く。
「柘榴様、お客様でしょうか?」
「ん? あぁ、ひより」
あまり大きい声ではないが、その温かみのある声は、アスミの先ほどまでの緊張感をゆっくりとほぐしていった。
――綺麗な人だな……。
ぼんやりとそう思っていると、シャドウが一歩前へ進み、ふわりと会釈をする。
「初めまして。ジークゼルス・シャドウという者です。このたびは、ご結婚のお祝いの言葉を申し上げたく、こちらへ参らせていただきました」
「まあ……わざわざすみません。私は天宮ひよりです。宜しくお願い致しますね」
丁寧な動作で頭を下げるひより。
アスミがとまどいながら彼女の姿を見ていると、ふとあることに気付く。
――あれ……? さっきの妖怪たちは……?
いつの間にか、シャドウに倒されていた妖怪が消えていた。
辺りは何事もなかったかのように、静まり返っている。
「? ?」
疑問に思いながら、また玄関の方へと顔を向けると、ひよりの後ろに立っていた男の妖怪が、げんなりとした顔で首を振っていた。