第3章 人と人ならざるもの
シャドウは、霧状態のまま空中へと浮かびあがり、柘榴から距離を置く。
少年の姿へと戻りながら、アスミの方を一瞥した。
アスミは呆然とした顔で、柘榴とシャドウを交互に見ている。特に怪我はない。
――ふぅ……まさか妖怪王からの攻撃を食らうとはね……。
――私も衰えましたね。まあ、肉弾戦は元々苦手ですけど。
――でも、姫島さんに怪我がなくてよかったですよ。
冷や汗をかきながら、困ったような笑みを浮かべる。
「嫌ですね、柘榴さん。何も言わずに攻撃してくるなんて」
「先にやったのはてめぇだろ」
「あれは正当防衛ですよ。あなたの場合は違う」
「いーや、これも正当防衛だ。自分の屋敷が荒らされないための、な」
「その点は謝りますよ。でも、見逃してくれませんかね。今日は連れがいるので」
シャドウの言葉に、柘榴がちらりとアスミの方を見る。アスミは柘榴と目が合うと、びくりと肩を揺らし一歩後ろへ下がった。
「あー、こいつのことか」
「素敵な女性でしょう?」
つい、先ほどまで攻撃されていたとは思えないほど呑気な声で、シャドウが笑顔で語る。
「いや、ひよりの方が美人だ。異論は認めない」
「ひより? あぁ、あなたの結婚相手ですか?」
「あぁ。……ってか、そんなところにいないで、さっさと降りて来いって」
「もう攻撃されたくないんですけどね……。さっきのはかなり痛かったです」
「大丈夫。攻撃しないから」
その言葉に、シャドウはしばし考え込む動作をする。
「……そこまで言うなら降りますけど。攻撃してきたら、許しませんよ?」
「わかってるって」
シャドウはまだ迷っていたが、小さく首を振って、おとなしく地面へと降りた。
「で? 用件はなんだ?」
柘榴が服についた土をはらいながら、シャドウに尋ねる。