第3章 人と人ならざるもの
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「で、その【侵入者】は?」
「玄関前の庭にいる」
走りながら柘榴は、かったるそうに赤嶺から事情を聞いていた。
「こっちがすでに何十人も向かわせてるのに、まったく歯がたたないんだ」
「そいつらが弱いだけなんじゃないの?」
「あんた自分の部下をなんだと思ってるんだ」
「……掃除係?」
「…………」
沈黙した赤嶺からどす黒いオーラが出てくるのを感じ、柘榴は慌てて否定の言葉を返す。
「いや、冗談だって! ……ほら、早く行こう」
「冗談に聞こえなかったけどな」
赤嶺の呟きを黙殺した時、玄関へとついた。
赤嶺が緊張した顔で扉を開けると、柘榴は目の前に広がっている光景に僅かに目を見開いた。
「おー、凄ぇな」
「感心してる場合か」
苦虫をかみつぶした顔になる赤嶺だが、柘榴は首をぐるりと回し、庭へと一歩足を向ける。
数十体に及ぶ妖怪たちが、地面に叩き伏せられている。
その中心にいる銀髪の少年と、少年の後ろに隠れるように立っている少女を、柘榴はじっと見つめた。
「あー、どうすっかな」
「どうもこうも、あの数を一瞬でねじ伏せたんだ。ただ者じゃない」
低く呟く赤嶺。その表情に苛立ちの色が浮かんでいるのを見て、柘榴はやれやれと肩をすくめた。
と、銀髪の少年の方が、柘榴達に気付き、驚きの顔になる。
「これは……柘榴さんじゃないですか。お久しぶりですね」
「……知り合いか?」
赤嶺が訝しげに柘榴の方を見る。
柘榴は、頬を人差し指で何度か引っ掻くと、一言。
「いや、知らん」
「って、覚えてないんですか?」
少年ががくりと肩を落とす。その後ろにいた少女が「ちょ、シャドウ!? どういうこと!?」と驚愕の声を上げる。
「……『シャドウ』?」
柘榴の頭を何かがよぎる。
しばらく考え込んでいた柘榴だが、何かを閃いたように、ぽんと手を打った。