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人間と妖と、

第3章 人と人ならざるもの




「柘榴」
「ん、なんだ、赤嶺か」


いつの間にか、柘榴の右腕的存在である赤嶺が立っていた。
ひよりが頭を少し下げると、赤嶺も会釈を返す。
だが、すぐに彼女から目を逸らし、眉間に深くしわを寄せながら、深刻そうな顔で柘榴に言った。


「柘榴、今すぐ庭に来てくれ」
「え、無理。これから、ひよりと2人で読書するんだけど」
「惚気てる暇はない。かなりヤバい相手が来ている」


その発言に、柘榴の肩がぴくりと揺れる。


「どういうことだ」
「わからない。瘴気が感じられないあたり、妖怪ではなさそうだが……」


早く来てくれ、と急かす赤嶺。柘榴はしばし考え込むような動作をすると、


「よし、お前に任せた」
「……は?」
「いや、だから任せた」
「聞こえなかったのか? ヤバい相手が来てるんだ」


だが柘榴はどこか拗ねたような顔で、ひよりの腰に手を回し、自分の方に引き寄せる。
突然のことに、「きゃっ」と小さく可愛らしい悲鳴をあげるひより。


「俺はこれからひよりと読書だって言ったろ」
「そんなことしてる場合じゃないんだ!」


声を荒げる赤嶺に、柘榴はわざとらしく身震いした。


「嫌だ」
「柘榴様、行かれたらどうでしょうか?」


赤嶺のただ事ではない雰囲気に、ひよりが助け船を出す。


「え、でも」
「読書はまたいつでもできますし……ここは、赤嶺様と一緒に行かれてください」


ね? と首をかしげるひよりに、柘榴は迷ったような顔をするが、肩を落としてひよりから手を離した。


「あー、はいはい。わかりましたよ」
「早くしろ」


赤嶺が廊下を走りだすと、柘榴はやれやれと肩をすくめて、ひよりに手を振った。
ひよりが笑顔で手を振り返すと、柘榴は嬉しそうにしながら、赤嶺の後を追っていった。


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