第1章 ダイヤのA 御幸一也
それから数日後の夜
続いていた雨が止み、雲から月が顔を覗かせていた
私は寮から抜け出し、一人夜の散歩をしていた
「もうすぐだな・・・・夏の予選・・・」
呟きながら空を見上げる
私たちにはまだ一年ある
だけど・・・・亮介先輩達3年生はこれが最後・・・
皆で勝ちたいな
そう思い、視線を空からグラウンドへと向けた
「あれ・・・?あそこに居るのって・・・一也?」
グラウンドに見える影は、帽子をかぶりメガネをかけている
そんなやつは一人しかいない
私は一也に向かって声をかけようとした
「おーい!!かず・・・やぁ・・・・」
だけど・・・
大きく出した声は、直ぐに小さく消えていった
理由は一つ
見えた影は一つじゃなかったから
「あれって・・・・」
私はもう一つの影の正体を見た瞬間
言葉を失った
「・・・・・」
どうしてこんな時間にあの二人が一緒に居るんだろう・・・
そんな疑問を抱きながらも、私の中から出てくる答えは一つだけだった
『恋人』
私の頭の中は、その二文字でいっぱいになった
どうして?
いつから?
そんなの聞いてない
一也の口から一言も・・・
だからきっとそういう関係じゃ・・・
でもじゃあ何で今ここに二人で・・・
「どうして一也と春乃が一緒に・・・・・?」
私はこの日、眠りにつくまでずっとこの疑問符がループし続けた