第2章 初めての依頼(ミッション)
カミラ洞窟を奥へ奥へと進んで行く内に、フェリアはあることに気づいた。
-以前とは、何かが違う…?
かつては洞窟でありながらも、フェリア達と同じく依頼を受けてきた者や、旅人、そして鉱石の採集に来た者などで活気に溢れていたはずだった。
だが今ここに、そんな雰囲気は欠片もない。
ランプの灯りや人々の喋り声の無い洞窟には、2人の足音だけが虚しく響いていた。
やがて細い道を抜けると、少し拓けた場所に着いた。
ベンチがある。
以前このような場所があっただろうか…?
少し不審に思いながらも、フェリアはベンチの方へと歩みを進めた…その時だった。
ガタンッ
踏み出した右足は地に還ることは無く、そのまま体制を崩して…
「危ないっ!!!」
レイシスの声に、ようやくフェリアは我に返った。
そう、落とし穴…だったのだ。
咄嗟にレイシスが肩を掴んでくれたおかげで落ちはしなかったのだが…
「フェリア、大丈夫ですか?
どこか怪我はありませんか?」
すぐ近くで囁かれた声。
そう、フェリアは今レイシスの腕の中にいた。
「最近はここも盗賊団の住処となってしまいましたからねえ…それでめっきり人も減っちゃって。
ここ関連の依頼だって誰も受けちゃくれませんからね…」
フェリアを自らの胸の中に抱き留めたまま、レイシスはぶつぶつと何やら呟いている。
「おい、レイシス…っ!」
耐えかねたフェリアが声を張り上げたところで、レイシスもようやく今の状態に気付き、腕から開放してくれた。
「レイシス、私は、大丈夫だ。
それより…その、ありがとう。助けてくれて。」
言い終わってすぐさま目を逸らすフェリア。
「じゃあとりあえず、少し休んで行きますか!
もうトラップに引っかかっちゃダメですよ?」
だが、この時まだ2人は気付いていなかった。
2人を見つめる人影に…。