第12章 音楽祭の始まり
舞台裏 赤司 said
ピアノの演奏が終わり、肩の荷が降りた
気分だ。
演奏者用の控え室で、一休みしていたら
征くんがやって来た。
コンコンっと、ノック音がする。
『はい。どうぞ。』
今は、控え室には私しかいない。
赤司「失礼するよ。やっぱり、ここにいたのか。優希が好きなアップルティー持ってきたんだけど、飲む?」
『わぁ。ありがとう♪征くん、気が利く!』
優希は、嬉しそうにホットアップルティーに
手をのばす。
『いただきまぁす。うん、美味しいっ!
温かいもの飲むと、ホっとするね。これで、バイオリンも頑張れそう♪
赤司「喜んで貰えて良かった。ピアノの演奏
すばらしかったよ。君の演奏に、皆な引き込まれていたよ。突然のことだったのに、
よく弾けたな。雪菜先輩も、誉めていたよ。」
『ノクターンはね。お母さんが、好きな曲
だったの。小さい時、よくピアノを弾いてくれたんだ~。征くんは、お母さんのピアノ聴いたことあったよね?私は、お母さんが弾くノクターン優しくって、大好きだった。』
赤司「あぁ。優しい音色だったな。
だけど、今日の優希のピアノも、優しい音色だったよ。」
優しく包みこんでくれるような音色。
そんな優希の演奏に、俺は癒やされたんだから。
『ありがとう。征くんに、言われると嬉しい。』
赤司「今日の赤いドレス、よく似合っているね。優希の瞳の色によく映える。
ククっ。」
『な、何いきなり?笑いだして~。
さっきの、誉め言葉は冗談でした(笑)
って、パターンなの?それ、酷くない?』
赤司「違う。ドレスが似合ってるのは、
本当の事だよ。
あのお転婆の女の子が、今日は大人しいお姫様に見えるなぁって思ってね。
初めて優希に出会った時のこと、まだ覚えてるよ。衝撃的だったなぁ。
いきなり、木の上から飛び降りてきて。
頭に、葉っぱをつけて現れたんだ。
それに、足には絆創膏がはってあったしね。
優希は、お転婆だったからね。
あ。だったじゃないな。今もお転婆か。」
『幼稚園の時の話でしょ~!そろそろ、忘れてくれてもいい頃よ!?
あれは、たまたまで。いつも木登りして
遊んでたワケじゃないのに~。』
赤司「ホントかな?お転婆なのには違いないよね?この前、高校生男子とケンカした
だろう?」
『あれは、小学生を助けるためだから。
仕方ないじゃない!!』