第1章 はじまりの冬瓜(風間仁)
「だからさ、仁は”駄目な男”じゃねーよ、って言ったつもりだったんだよ。だけどルーティは、逆の意味で覚えてたらしくてさー」
耳を疑った。
ケンも、『冬瓜』は”イイ男”だと言っていた。
だから、俺もそのような意味だと解釈していた。
だが
「ブルースの奴がヤケクソで逆の意味言うから、みんな間違って覚えて使っちゃうんだよ。全く」
安堵している自分がいた。
名前が俺の事をよく思っていないと思っていたからだ。
それが勘違いだと分かって、ホッとしている自分にもまた驚いた。
何故安心したのだろうか。
そう考えていると、名前が更に言葉を続けてきた。
「仁は背が高ーし顔整ってるし強いし優しい奴だからさ。普通の女子目線だとパーフェクトじゃねーのかな」
だから、あたし的に仁は『冬瓜』じゃねーと思う。
名前はそう言った。
今更、先程手当てしてもらった部分が熱く感じた。
さっきまで俺を取り巻いていた感覚が消えた代わりに、今度は心臓の鼓動が早くなる程の感覚が俺を支配していた。
END