第1章 はじまりの冬瓜(風間仁)
そもそもの始まりは、リュウやケンとの会話からだった。
「なぁ、オレは『冬瓜』だと思うか?」
「ケン、何だ?『ドングァ』って」
リュウやケンと組手をし、休憩をしている際のケンの言葉に、リュウは疑問を投げかけた。
「ブルースがチャイニーズから『冬瓜』って言われてただろ?で、どんな意味だろうかと思ってたら、”イイ男”って意味なんだとさ!」
だから、男メンツが密かに「自分は『冬瓜』なのか」を気にしている。
そうケンは言っていた。
次に、ルーティと名前が会話しているのを見かけた。
意図的に会話を聞くつもりではなかったが、近くを通った為、会話の内容が聞こえてしまった。
「あたし、スタンは『ドングァ』じゃないと思うのよねー」
「スタンか……スタンの場合は人によると思うぞ?多分フィリアから見たら、スタンは間違いなく『冬瓜』じゃないと思うし」
「え!?それは逆じゃない?」
フィリアという、聞きなれない人物の名が出てきた。
二人のかつての仲間か何かだろうと思っていると、再び会話が始まった。
「んーじゃあ……あ、ジンは?名前的には『ドングァ』?」
何故俺の名が出る。
大方、視界に俺が入ったからだろう。
だが、他人がどう言おうと俺には関係ない、そう思っていたはずだった。
「仁は『冬瓜』じゃねーだろ」
は?
「えぇ!?どっちかっていうとジンは『ドングァ』でしょ!?あんた、やっぱ感性が普通の女子じゃないわねー」
「っていうかルーティ、お前……… 」
二人の会話を全て聞いてしまう前に、俺は早足でその場を去った。
変な感じがする。
俺は抱えた事もない感覚を振り払うかのように、三島平八を殴りに行った。