第9章 @ 二口堅治
取り残された二人の間に、雨が降りしきる音だけが響いている。
猫の顎を只管撫でていた二口は、自分の傘を閉じて猫の入った段ボールを持ち上げた。
「柴田、傘入れて。」
『えっ、ちょっと二口その子たちどうするの!』
「可哀想だから家に連れてく。」
そう言って二口は強引に絢の傘の中に入る。
二口の頭は雨つぶで湿っており、雫が何滴か滴っている。
『家どっち?』
「もっと向こう。ごめんなこいつら家置いたら送るから。」
『大丈夫だよー。』
二口と絢は肩を並べて歩き出す。
その間話すことはなく、しきりに雨粒の音がしていた。
二口はふと囁く。
「猫、毎日見に来いよな。」
その言葉に気づいた絢は思わず頬を紅くした。
『それって…毎日家に来いってこと?』
「…うん。」
『いいの…?』
「いいの。」
二口の耳が少し紅くなっている。
二口の家に着き自宅に帰ってもなお、絢の胸の鼓動の速さは収まることがなかった。