第6章 @ 木葉秋紀
なんとなく気まずい雰囲気で、夜の雨の中を二人で歩く。
何か話を始めても続かなくて、少し不安になる。
「…あのさ。」
ふとした瞬間に木葉が口を開く。
『…何?』
「お前…やっぱ木兎好きなの?」
『…は?』
思わぬ質問に声とならない声が出る。
凄く拍子抜けした、間抜けな声。
木葉は思わず吹き出して、大笑いした。
『ちょっ、聞いといて酷い!』
「ごめん、あまりにも馬鹿みたいな声出してたから…」
『殴るよ?』
「ごめん。」
木葉は傘を真っ直ぐ持ち直して、絢の方を見る。
訳も分からず首を傾げると、雨で冷たい掌が絢の頬を撫でた。
冷たい感触に身体が強張る。
「…俺たち、やり直さねぇ?」
真剣に見つめるその視線が、絢の視線に絡みつく。
『…木、葉?』
「…もっかい、駄目?」
『…駄目なわけ、ない…。』
気づかぬうちに涙がこみ上げてくる。
熱い雫が頬を伝うと、木葉がそれを優しく拭う。
傘を持った方と逆の腕で肩を抱き寄せられる。
「…愛してるよ。」
堪え切れない涙を流す絢の耳元で、木葉はそう呟いた。