第3章 壁の中の街
私もぎこちなくニコッと微笑む
「全然似てねーな」
「そーですか」
「あいつの方が性格がいいし
芯の通った綺麗な女だ」
「ひっどい!
ちょっと言いすぎですよ」
「本当のことだから
しょうがないだろう
俺は嘘はつかねーんだ」
「嘘つき」
「あぁ?」
「もういいですー!」
私は先を歩くリヴァイさんを
小走りで追い越した
いつのまにか人の多い街を抜け出し
あたりは草原が広がっていた
目の前には大きな壁
どこまで続いているのか
行き先を塞ぐように
永遠と続く長い壁がそびえ立っていた
先ほどの街の賑やかさは一切なく
聞こえるのは風と草木の揺れる音
季節は…初夏くらいだろうか
暑くも寒くもなくちょうどいい温度
少し走って汗ばんだ体を
気持ちの良い風が通り抜けて
金色の髪と白いワンピースを揺らした
「…すごい」
見たこともない景色に圧倒され
しばらくの間動けずにいた
風で乱れた髪を
耳にかけながら
リヴァイに話しかけようと
振り返ろうとしたその時
「」
と、確かに聞こえた
風で消えてしまいそうなくらい
か細い声で
リヴァイさんの声で確かに
と。
やっぱりリヴァイさんはまだ
ずっとさんを想っているんだ
どうしたらいいの
振り返るに振り返れないよ…
そんなことを考えていると
背後からふわっと
優しく抱きしめられた
いきなりのことで
私の体がビクッと跳ねる
「悪い」
そう謝りながら私を抱きしめた
「…どうして…謝るんですか」
違う。私じゃない
リヴァイさんは今
さんを抱きしめてるんだ
「知らねぇ野郎にこんなことされて
嫌だろ」
「…今だけはさんで
いてあげます」
抱きしめる腕の力が
少しだけ強まった
「知った風なこと言いやがって」
私も不思議と嫌ではなかった
私なんかで
リヴァイさんの心の隙間が
うまってくれるなら
さんとして抱かれてもいい
この気持ちは同情だろうか?
恋人をなくした人への
せめてもの
同情なのだろうか