第7章 異例の弾丸
三輪田隊狙撃手2名の足元ギリギリの箇所から煙が。
「流石。いい仕事してくれるねえ。」
笑う迅を他所に、疑心暗鬼に包まれる敵部隊の面々。
牽制の為の銃弾。いつでも仕留められると警戒させ、同時に自分の位置を晒す。
絵梨を仕留めに迅から離れれば、その分迅には余裕が生まれる。
放って置かれたとしても絵梨は邪魔が入る事なく満足に援護射撃を通せるものだ。
しかし違う。
そんな当たり前の建前などどうでも良い。
"何故バッグワームを起動しレーダー上から消えている狙撃手の居場所がわかったのだろう"
絵梨の放ったイレギュラーな弾丸がトップチームの心を抉る。理由がわからない以上、絵梨に対抗する術がわかるはずもなく、
______「放っておけ。」
この人を除いて。
______「手段はともあれ、あそこで狙撃しなかったという事は、撃てない理由でもあるんだろう。絶好の機会を逃してまで援護に徹底するだけなら放っておけ。」
風間は風刃を警戒しながらそう言った。
絵梨はスコープ越しに風間を直視する。
小柄な彼が、今は大きく見える。その姿ははっきり言って、追い詰められている側の者とは到底思えない。
「確かに」
スコープから目を離し、構えを解く。
「今は、ね。」
独り言を追い風に流して、絵梨はその場を離れた。
次の段階へ。