第6章 繋がる事はない
ひとまず絵梨のトリオンについては保留となる。どちらにせよ、測れないのでは進展も何もないのだから。
「じゃあ約束通り…」
「ふむ。」
模擬戦での賭けである相手への拒否不可能な質問権。それを手にした絵梨は、早速空閑からこちら側に来た理由を聞いたのだった。
そこで聞いたのは辛い過去。
命の重みを感じさせる、残された者の悲しみだった。
「謝らなきゃいけないね。私は貴方の事を近界民だからという一点だけで敵意を剥き出しにした。」
「別にいいよ。こっちじゃ近界民は酷い嫌われようだからな。お前も相当嫌ってるみたいだし。」
「…色々あったの。」
指にはめられた黒トリガーこそが、空閑をこちら側の世界に連れてきた要因。
辛い過去と黒トリガーの真の意味。
その真実は絵梨にもズシリと重くのしかかる。
「トリガーと命が不安定な天秤の上で、今は辛うじて釣り合ってる。いつ逆転するかわからないし、そもそも天秤自体が壊れてしまう可能性もある。…考えただけで大変なものね。」
妙に説得力のある言い方に、その場の雰囲気に影が刺す。
誰より絵梨は寂しげに地面に視線を落とす。
今その言葉が本物であると知るのは絵梨本人。そして空閑だけ。