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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第7章 Blame


 ヴィンセントと出会ってからもうすぐ二月という時。
儀式の日が明日に迫っていた。ヴィンセントには、まだ言えていなかった。今日こそ伝えなければ。
着替えを済ませ、海を眺める。
ドアをノックする音が聞こえ、彼を迎え入れる。

「ヴィンセント。どうぞ」
「いや……今日は、ここで」
「ん?」
「別れを……言いに来た」

息を飲む。

「親父の調査が終わったんだ。今日、ここを発つよ」
「そう……。とうとうこの日がきたのね」
「今までありがとう。楽しかったよ……」
「私も。ヴィンセント……お元気で」

 泣かないように、奥歯を噛んで笑顔をつくる。
その笑顔が痛々しく見えたのか、彼は私を力強く抱きしめた。

「このまま君を連れ去りたい……」
「ありがとう……。けど、私はここで、私の責任を全うするわ」
「また必ず会いに来る……」
「……もう、会えないかもしれない。あのね、これ、返すわ。ヴィンセントの銃。それから、これは私からのプレゼント。お守りよ」

 淡いピンク色の花のような結晶を取り出す。決して小さくはないが、持ち運べない物ではない。
持ち主が必要とした時、回復魔法のマテリアに姿を変える。いつかきっと彼の役に立つだろう。

「ありがとう……。代わりと言ってはなんだが……。これは、護身用に君が持っていてくれ」

ヴィンセントに返すつもりの銃は再び私の手元に戻った。
刻まれた刻印を見るに、随分手が加えられているもののようだが。

「大切なものなんじゃないの?」
「いいんだ。その銃が君を守ってくれるなら……」
「ありがとう……」

銃を胸に抱きしめて、ヴィンセントに口付ける。
ヴィンセントは身を屈めてそれを受け入れ、頭を優しく撫でた。

「忘れない。君と過ごした日々を……永遠に」
「ええ。私も……いつまでも、あなたを愛してる」

 何度も唇を重ねる。名残惜しくて、このままではいつまでも離れられない。
それとなく互いに唇を離し、俯く。今度こそ別れの時がきた。

「元気でな……」
「あなたもね」
「愛している……」

これ以上は、本当に別れがたくなる。深く頷いて、静かに、小さく手を振った。
これが恋人を失う辛さ。胸が苦しくて、鼓動が乱れ溢れて来る涙。
彼の背中を見送りながら、これまでに味わった事のない絶望感に打ちひしがれた。
こうして、呆気なく私達の関係は終わったのだった。

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