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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第5章 forbidden lovers


 いつしか夜が明け、辺りに穏やかな風が吹き始めていた。シャロンは海に背を向け、陸路をひたすら歩いた。岩肌が荒々しく隆起した断層を辿っているうちに、景色が随分と変わる。やがてたどり着いたのは大きな渓谷。谷間には人工的な建造物が見えた。
 ここはコスモキャニオン。渓谷の居住区は本で読んだことがありシャロンもすぐにピンと来た。しかしそうであるとすると隣の大陸まで来てしまったことになる。随分流されていたのだなと彼女は遠く空を見つめた。

 今夜はニブルヘイムのニュースも気になるので宿に泊まることとした。宿泊手続きを済ませたシャロンは、近くの店で日用品を簡単に揃え、部屋でシャワーを浴びた。
新しい服に袖を通す喜び。久々の感覚だった。好みに合った服が売っていてよかったと鏡の前で少しだけ気分を上げる。

 その後は宿で軽く情報収集をしたが、未だニブルヘイムの火災についての公式記録は流れていなかった。耳に入るのは噂だけ。中には神羅のソルジャーが謀反を起こしたとか、神羅の極秘実験の隠蔽だとか気になる噂もあったが、皆が持つのはそれぞれ別の内容の噂だったので、核心には至らなかった。
 ただシャロンが最後に覚えているのは、自分の出生の秘密を知ったセフィロスの悲しみに満ちた表情、そして憎しみの芽吹いた鋭い眼差し。
何度考えてみても、火をつけたのはセフィロスなのではないだろうかという嫌な仮説にたどり着く。

 彼女は翌日、ニブルヘイムへ向かうため宿を出た。ところが、タイミング良く住人に呼び止められ、次々仕事を頼まれる。これは彼女も後々わかったことだが、コスモキャニオンの大占術師から、シャロンをニブルヘイムへ行かせてはならないと御触れが出ていたそうだ。

 そして、ニブルヘイムの大火災の発生から数日経って、神羅からセフィロスの死亡が公式発表された。

 再び躍進力を失った彼女は、住人たちの好意でコスモキャニオンで働きながら生活をし始めた。この地の住人は、厳しい運命を背負った人間を山程見てきた。だから彼女を受け入れることにも寛容だった。シャロンのほうも、慣れない集団生活に困惑しながら必死に暮らした。
 日課の水汲みでは、一人になるためかふと緊張状態が解けてしまう。
優しく受け入れてくれる住人達の優しさを思うと、自然と涙が溢れることもあった。
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