第4章 砂時計
セフィロスはすぐに眠りについた。シャロンと知り合って間もないというのに、無防備にも寝息を立てて。信用している証か、彼の自信が故か。シャロンがセフィロスの顔をそっと覗き込む。
「……母さん」
「っ!」
寝言のようだった。母を呼ぶ声。彼の母親は一体どこにいるのだろう? 故郷は? シャロンは彼の事を何も知らないことに気がついた。
一晩中、セフィロスの寝姿を眺めては思いを巡らせた。そして早朝、太陽が昇ると同時に部屋を出た。
宿の前には見張りの兵士がいて、送ってもらう約束を断ろうとしたが、結局断りきれずに家まで護衛してもらうことにした。
それからは雨の日が続いた。シャロンも外へ出ずに家事をしていると、いつかの兵士が家を訪ねて来た。ひどく息を切らせて。
「シャロンさん、突然すみません。実はセフィロスさんがここ何日も部屋から出て来ないんです。どうも魔鉱炉の調査に行ってから様子がおかしくて。自分達ではどうしようもなくて……せめてもの希望で、あなたに」
「セフィロスが……。その魔鉱炉で何があったんですか?」
「実は……。あの魔鉱炉は、神羅のモンスター製造所だったんです。いえ、正確には、そうなっていた。最近魔物が多いのも、魔鉱炉でおかしな研究をしたせいなのではと……」
「まさか、宝条……」
シャロンの表情が曇る。
「博士をご存知でしたか」
「あ……。すみません、忘れてください……というわけには、いかないですよね」
「……いえ。とにかく隊長の様子が気になります。もう色々試したんですが、自分達には役不足のようで。あなただけが頼みの綱なんです」
シャロンは顎に手を当てて少し考えてみる。
「セフィロスに、会えばいいんですよね?」
「はい」
シャロンは頷いて身支度を整えた。