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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第10章 叙情詩


「ヒーッヒッヒッヒ! 違う違う! 科学者としての欲望だ!」

 宝条の狂気にクラウドは目を見開き、背に差した剣に手をかける。
ヴィンセントもたまらず銃を構え、宝条の後ろ姿に憎しみを込めた声色で語りかけた。

「私は間違っていた……。眠るべきだったのは、貴様だ……宝条!」
宝条が振り返る。

「私は……ヒッ、ヒック! 科学者としての欲望に負けた……。この間もな、負けてしまった」

宝条の様子に異変を感じ、メンバーが武器を構える。
徐々に変わる声色と、末端から中心にかけて大きく脈打つ肉体。彼はもはや完全に人間ではなくなっている、そのことをこの場にいる全員が感じ取っていた。

「自分の身体にジェノバ細胞を注入してみたのだ! ヒーッヒッヒッヒ! 結果を……見せてやろう!」

宝条がモンスターを出現させ、三人に襲いかかる。
三人はモンスターの攻撃をかわしながら、宝条自身にも攻撃を与えるが、肉体への打撃は少ないように感じられた。
モンスターがシャロンに襲いかかる。咄嗟に身構えはじき返すが、動きに戸惑いが見られる。

「ヒッヒッヒ、どうした? お得意の慈悲か?」
「そんなつもりは……」
「ヴィンセント・ヴァレンタイン、こいつを守ってやらないのか? ヒヒッ……自分のことで手一杯か……お前は結局保身に徹するしか能がない負け犬といったところかね!」

ヴィンセントはなにもシャロンを助けていないわけではない。確かに完璧に守りながら戦闘するというのは簡単なことではない。だが、何かあればすぐにサポートをする自信はあった。

「シャロン……、助けが必要か?」
「いいえ、全く問題ないわ」

パーティがかすり傷を受けただけで即回復魔法をかけている様子を見るに余裕があるのは間違いなさそうだった。
しかし、あえて回復と補助に回っているようでもある。

「どうしたシャロン? 側にいる。だから……思い切りあいつを殴ってやれ」
「だけど、あなたのほうが単体火力は高いわ。私が補助をやるのが適役……」
「ビーストになれば君を守れるかわからない」

彼に告げられたシャロンは自分に装備されたマテリアを見て、戦い方を探る。

「……わかった。 目にものを見せてやるわ……ヴィンセント、クラウド、避けてね!」
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