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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第9章 瞳の住人


 ふと結晶が光を放つと、ルクレツィアの思念が浮かび上がり、肩を抱いた状態で蹲っていた。

「ルクレツィア……生きていたのだな」
「消えてしまいたかった……。みんなの側にいられなかった。……死にたかった。でも、私の中のジェノバが私を死なせてくれない……」

シャロンは瞳を大きくし、胸に手を当てながら悲しすぎる彼女の願いに心を痛める。

「ルクレツィア、死にたいの……?」
「シャロン……苦しいのよ……。もう、消えてしまいたい……」
「死にたいなんて、本当の願いじゃないわよね……」

ルクレツィアの思念は苦笑を浮かべ、静かに立ち上がる。そして何かを受け止めるように腕を広げ微笑んだ。

「最近ね、セフィロスの夢をよく見るの。私のかわいい子供……。だけど、あの子が生まれてから私は一度も抱いていない……」

彼女が空想の中のセフィロスを抱きしめて、苦しそうに顔を歪める。

「子供を抱けない……。母親だと言うこともできない……。それが、私の罪」

小さく震える彼女を放っておけず、ヴィンセントが心配そうに近寄るが、またもルクレツィアに制止される。
ふと、彼女の思念が消え、再び真っ直ぐに立ち上がった状態で浮かび上がる。そしてヴィンセントを見つめ問いかけた。

「ヴィンセント、教えて……」
「なにを……」
「セフィロスは……あの子は生きているの? 5年前に死んだと聞いてるわ。でも、最近よく夢を見るの。それに、あの子も私と同じ簡単には死ねない体……ねぇ、あの子は……」

ルクレツィアは、セフィロスに会いたいのだろう。彼が生きているのを望んでいる。それはそうだろう。腹を痛めて産んだ我が子なのだから。
せがむルクレツィアになかなか答えないヴィンセントを見かねてクラウドが一歩前に出るが、ヴィンセントが手で制する。

「セフィロスは、死んでしまったよ……ルクレツィア……」

それを聞くと、ルクレツィアの結晶は光を鎮め、思念も砂が風で飛ぶように消えてしまった。

「もういいか。戻るぞ」

クラウドが声をかけ、彼女達は祠をあとにする。
シャロンがヴィンセントの横顔を見ると、彼もまたシャロンに気付いて視線を合わせる。シャロンの腰に手をやり、彼女をエスコートして歩きながら彼は、どこかぼんやりと空を見つめていた。
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