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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第9章 瞳の住人



「セフィロスのメテオを止められるのは自分だけだと言っていた」

クラウドの言葉をきっかけに、一行はエアリスの辿った道をもう一度訪れることにした。

ボーンビレッジ。シャロンの故郷が近い。
シャロンはブーゲンハーゲンとクラウドのメインパーティと別れ、辺りを散策することにした。何かを探すように森の中へ進むが、突然後ろから大きな腕が彼女を包み、足を止める。

「シャロン……どこへ行く?」
「えっ……あ……ううん、どこへも……」

ヴィンセントの香りが彼女を包む。彼は彼女を心配して後を追っていた。二人だけなのをいいことに、見栄を張らず彼女を抱きしめたりして。
彼女は行くあてもなくただ何かに呼ばれるように先へ進もうとしていたが、こうしてヴィンセントが引き止めたのでその呼ばれる感覚はいつしかどこかへ消えていった。

「君がいた頃、ここはまだ花の咲く美しい楽園だった」
「だからなのかな……何か足りない……虚無感に襲われるのは」
「覚えているのか?」
「わからない……。だけど、なんだか寂しいね」

シャロンは腕をゆっくりと上げ、流れるように空気を混ぜると、地面に小さな芽が出、花が咲く。

「美しい人……」

シャロンの優雅な技を見て、ヴィンセントが彼女の髪に指を絡ませ、その頰に熱い唇を落とす。
彼女はくすぐったそうに小さく笑い、ヴィンセントの抱擁に身を任せると、唇と唇を触れ合わせた。

「……んぁ……花を褒めてほしかったな……」
「すまない……。君しか見ていなかった……」
「もう……ん……」

口づけが深くなり、ヴィンセントの指先が彼女の首筋にかかったところで、甘い空気を壊すように着信音が鳴り響いた。

「呼び出しか……」
「もうわかったのかしら?」
「さぁ、それはどうだろうな……」

シャロンは少しの焦燥感を感じ始めていた。
彼を罪から解放する方法を見つけるには時間が足りなすぎる。
彼女を求めて側にいる間は、満ち足りたような柔らかい表情を見せるヴィンセントだが、それでもまだ時々、一人空を見上げている時間があった。
ルクレツィアも未だ行方知れずのまま。

しかし、邂逅の時は突然訪れた。
古代種の装置を動かす鍵を探して世界を旅するうちにたどり着いた洞窟で。
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