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6月合同企画【相合い傘】

第4章 黒子のバスケ/赤司征十郎


…雨だ。


「うわ、雨降ってんじゃん」
「オレ傘持って来てねー」


そんなクラスの男子の会話も耳に入らず、私は窓の外を眺めていた。

この時期になると、あの頃を思い出す。
幸せだった、楽しかったあの頃を。ーー



:




「」
「赤司君!」
「待たせたね」
「ううん、大丈夫だよ」



中2のこの梅雨どき。
部活終わり、急いで私の元へ走ってきてくれたのは赤司征十郎君。
彼は帝光中の中でも特に強いと言われるバスケ部の一軍で、しかも主将を任されている。
さらには名家のご子息。

こんな平凡な私とはとても遠い存在だけれど、一応私の彼氏だ。
ただ去年今年と同じクラスになっただけの私が彼の隣に立つことを許されるのは、奇跡としか言いようがない。



「さぁ、帰ろう」
「うん」



最初は彼のファンというファンの子に羨ましいだのズルいだの言われていたが、今となってはそれもなくなっていた。
それに、彼も私に微笑みかけてくれるから、安心できた。



「あ、」
「雨が降ってきたな…」
「傘持ってきた?」
「いや、今日は朝からバタバタしてしまってね」
「珍しい…。変な夢でも見てたの?」
「まぁ、そんなところかな」



雨の日は、どちらも傘を持っていても、どちらかが忘れていても、相合傘をして帰っていた。
言い出したのはこれまた赤司君からだった。

彼はこれまで、恋愛というもの自体知らなかったらしい。
いや、正確に言うと知識としては知っていた。
が、それを感情として知ることはなかった。
そんな彼と私が今こうしていられるのは、私のせいというかおかげというか、とにかく私の猛アタックで、だ。



「ふ、やはりの傘は小さいな」
「うーん、濡れちゃうね。相合傘用の傘買おうかな?」
「いいや、これでいい。この濡れるか濡れないかくらいが、少し楽しい」
「え、楽しいの?」
「ああ。もしかしたら、君とだからかもしれないな」



…恋愛の楽しさを教えてもらっているのは私の方かもしれないが。



「ズルいなぁ、赤司君は」
「ん?何がだい?」
「もー…わかってるくせに」
「はは」



こうして近くで彼の素の笑顔を見れるのも彼女の特権なんだろうな、と少しニヤける顔を必死に抑えた。





だけどその数ヶ月後、そんな私達の間に小さな距離が生まれた。
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