• テキストサイズ

6月合同企画【相合い傘】

第3章 ハイキュー‼︎/黒尾鉄朗


「ちょっと聞いてくれる、オレの話」
「…はい?」



突然黒尾さんは話し始める。
いつもこの人のペースだ。



「今日傘持ってきてたのに、自分が忘れたからって夜久…友達がオレの傘持って行っちゃってさ、頑張ってここまで来たけどビショビショだし、コンビニで傘買おうと思ったら売り切れなワケよ。どう思う?」



そしてよくわからない質問を私に投げかけてくる。



「…可哀想だなーと…」
「だろー?てことで、」
「えっ!」
「うわ、ちっっちゃ!」
「えっあの、」



この人のペース過ぎて頭が付いていかない。
私の傘は小さいのに、無理矢理入ってきた黒尾さん。
ちょっとこの身長差じゃ傘の意味ないんじゃないかなぁ…。



「オレの荷物持ってて」
「えっ、あ、はい」



でもなぜか言いなりになってしまう私。
…どうしてだろう。



「さー帰ろ」
「は、はい…?」
「家どっち?」
「あっちです…」
「りょーかい」



不思議、無茶苦茶なのに少し嬉しいと思う自分がいる。
それはおそらく、一人で帰っていた私を雨が寂しい気分にさせていたからだ。



「黒尾さん濡れてませんか…?」
「んー?もう濡れてるし大丈夫」
「風邪ひいちゃいます…あ!タオル…」
「いやいや、大丈夫だって。水も滴るいい男…みたいな?」



さっきクシャミしていたくせに。



「…あ、じゃあ少し待っててください!」
「えっ、ちょっと!濡れる濡れる!」



だったら少しくらい温まるものを。



「肉まん…」
「あったまりますよ!」



冬、寒い時はいつも買っていた。
肉まんを食べると心も体もあったまる。



「…てか、オレ傘持ってるから食べらんねー」
「え、でも右手…」
「食べらんねー」



そう言って口を大きく開ける黒尾さん。
下手したら噛まれそうだ。



「熱いですよ?」
「…オレ猫舌だからフーフーして」
「えっ」



じーっと見られるもんだから、渋々フーフーと冷ます。
そして口に運ぶとパクッと食べてくれた。



「んー美味い」
「あったまりました?」
「うん、あつい」
「?」



そして肉まんを食べきった黒尾さんは、もっと温まると言って私を抱きしめた。
何が起きたかわからなかったけれど、雨の匂いに混ざった温かい匂いが心地良くて、私はそのまま抱きしめられていた。




end
/ 22ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp