第2章 黒子のバスケ/氷室辰也
「え?オレの?」
「んで室ちんは誰かの傘に入りゃいいじゃん〜。こん中では割と小柄だし」
「…これでも180あるんだけどな…」
「の傘に入れば丁度いいアルよ」
「「?!」」
氷室先輩 可哀想…だなんて思ってたら、とんでもない一言が飛んできた。
誰が、誰と、同じ傘だって…?
「や…それはちゃんに悪いよ」
「えっ」
「オレは良い案だと思うけど〜?」
「えっ」
「はどうアルか?」
「えっ、わ、私、は…」
3人の視線が私一人に集中する。
他の人は先に歩いているし、確かにムッ君は1人じゃないとダメだ。
でもって劉先輩と同じ傘はとても気まずい。
と、なると……
「私は、大丈夫、です」
もうこう言うしかないじゃないですか。
嫌というか、むしろ相合傘の相手が私みたいな人でごめんなさいっていう気持ちでいっぱいなんだけど、多分先輩はそんなのは全然気にしてない。
「…じゃあ、入れてもらおうかな」
「はい、どうぞ」
「あ、傘持つよ。その方が高さも合わせやすいし」
「えっ、あ、ありがとうございます…」
それにしても、私の心臓が最後まで保つかどうか。
「ちゃん濡れてない?」
「いえっ、私は全然!」
どうしてこうなったのか。
後輩マネージャーはそっちで楽しく帰っているし、他のメンバーも濡れたりふざけながら帰っている中、私達はどこか緊張というか落ち着かない状態だ。
さすがの氷室先輩も緊張とかするのだろうか。
「あ、ちゃん、そこ水溜まりあるからコッチ」
「えっ」
スッと氷室先輩の腕が私を引き寄せてくれたおかげで、水溜まりを回避できた。
こんなことをサラリと出来るってことは、やっぱり氷室先輩はそんなに動じてないのかな…?
「ありがとうございます…」
「紳士として当然のことをしただけだよ」
なんてね、と はにかんだ氷室先輩の顔は、少し紅くてとても綺麗だ。
「じゃあ私はそのレディに相応しい振る舞いをしなくちゃですね」
「はは、もう十分レディだよ」
「…今そう思ってくれてるならそれでいいです」
「?」
ずっと私の素を受け止めてくれた氷室先輩。
まだまだ教えてないところもあるけど、これからもその笑顔が私に向けられればいいな。
end