第6章 黒子のバスケ/黄瀬涼太
「最近どうっスか」
「どう、って?」
「えーと、部活とか」
「部活は相変わらずしてない。でも生徒会してる」
「マジっスか!さすがっスね」
なんでこんなことになってるんだろ。
元カレと相合傘なんて、どうかしてる。
「どの役員なんスか?」
「会長」
「えっ?!」
「嘘、ただの風紀」
「ビックリしたぁ…。そんなとこも相変わらずっスね?」
「え、私そんなに嘘ついてた?」
「オレをビックリさせる」
「あぁ…」
誰か涼太のファンに見られたらどうしよう。
今度こそ命が危ないかもしれない。
「涼太こそ、モデルはどうなの」
「あー、最近は部活に集中してて、あんまやってないっス」
「どうりで…」
「え?」
「あ、いや…」
なんで私はこんなにダメなんだろう。
雑誌を見ては探して、特集されていれば読み込んで、月バスに載っていればレジに並んだりもして。
一体私はどうしたいんだろう。
「もしかして、雑誌見てたりするんスか?」
「…さぁ」
「はは、相変わらずっス」
「何がよ」
「本当のことは嘘つけないところ」
そんなに楽しそうに笑わないで。
そんなに付き合ってた頃みたいな顔しないで。
そんなに私のこと知ってくれてる感じ出さないで。
「…なんで」
「え?ごめん、雨の音で聞こえなかった」
「…ううん、何でもない」
「だーかーら、オレにそういう嘘は通用しないってば」
やめてよ。
そんな拗ねたみたいな顔で覗き込まないでよ。
ただでさえ距離が近いだけで苦しいのに。
「…っちさぁ、別れる時『最近の涼太は好きじゃない』って言ったじゃないスか。こんなの自惚れかもしれないんスけど、そうじゃなかったスよね?」
「え…」
「甘えたこと言うけど、っちならそれでも別れるって選択肢じゃなくて、正すっていう選択肢にしてたと思うし」
…だから、なんでわかっちゃうの。
わかってほしくない。
ずっと涼太は涼太のやるべき事したい事に集中してほしいのに。
お願いだから、これ以上言わないで。
「イジメとか…あったんじゃないんスか?」
「そんなこと、ない」
「嘘」
「イジメじゃないよ。仕方のないことだった」
「なんで頼らないんスか」
「もういいじゃん、関係無いじゃん」
「関係なくない!」
…なんで、どうして関係なくないの。