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6月合同企画【相合い傘】

第6章 黒子のバスケ/黄瀬涼太


6月17日水曜日。
天気は雨。
梅雨という名のこの時期は、どうしても雨が多い。



「なんでだろ…」



わかっていたはずなのに、というか家を出るまでは確実に傘の存在を覚えていたはずだ。
それなのにどうして今ここに無いのか。
記憶を辿れば、そもそも朝学校に来た時点で私の手には鞄しかなかった。



「玄関に置きっぱなしじゃんか…」



自分のバカさ加減に呆れて溜め息が出る。
最近よくモノを忘れる。
なんだか泣けてきた。



「コンビニまで走るか…」



この時期コンビニの人は大変だと思う。
こうして傘を忘れる学生が大勢いるだろう。
それなのによく売り切れてるのを見かけるが、よっぽど忘れる人が多いのか仕入量が足りないのか。
どっちにしても私も早く買いにいかなければ無くなってしまう。

パシャパシャと走ってコンビニに辿り着く。
が、やっぱり予想は的中で、傘は全て売り切れだ。



「カッパ…はさすがになぁ…」



残ったカッパで帰るか一瞬考えたけど、どう考えてもダメだ。
女子高校生がカッパで帰るとか何事。



「っち…?」



ふと後ろから懐かしい声と呼び名が聞こえた。
振り返るとそこには、やっぱり懐かしいアイツがいた。



「涼太…」
「久しぶりっスねー!元気にしてたっスか?」
「うん、一応ね」
「一応てなんスか」
「今は超ブルーだから」



私と涼太は中2の時に付き合っていた。
いわゆる元カレ元カノだ。
気も合うし話してて楽しいし、一緒にいて楽だった。
だけど涼太が所属していたバスケ部が少しおかしくなり始めた頃、私達の関係も少しずつおかしくなっていた。



「そーいや明日誕生日だね」
「覚えてくれてたんスか!」
「んー、まぁ、ね」
「嬉しいっス!」
「おめでとう」
「まだ早いけどありがとう!」



こうして普通に喋られるのは、涼太が特に何も感じていないからだろう。
私はまだ少し緊張している。
証拠に手が震えて涼太にそれがバレないかヒヤヒヤする。



「あ、そうだ。せっかくだし送ってくっスよ」
「いや、いいよ」
「だって傘無いんでしょ?風邪ひかれちゃ困るし」
「涼太は困んないでしょ」
「見て見ぬフリは出来ないっス!」



ほら、傘が無いせいで優しくしてくれる。
…困るんだって。
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