第1章 桜の音
そして月日が流れ、俺は高校生になった。
「高校生の俺どうよ!?」
「ふふふ、かっこいいよ。背だって伸びて男の子になったね」
「……俺はじめから男なんですケド」
ふふふ、といつものように笑う桜子。
俺も嬉しくて笑った。
いつの間にか俺は桜子の身長を越していた。
それを桜子は「嫌だなあ」なんて言っていたけど、笑って言われてもなんの説得力もねえよ、バカ。
俺は年を取った。
桜子は何も変わってない。
あれから6年が経ったというのに、桜子の外見は何一つとして変わっていない。
「なぁ、桜子」
「なあに、和輝」
「桜子ってさ、本当に人間?」
俺は正直うすうす気が付いていた。
桜子が人間じゃないことくらい。
でも、それを言ったら桜子とは一緒にいられないと思ったから、だから知らないフリをした。
「……いつから気が付いたの?」
「中学に上がってからすぐくらい、かな……」
「ふふふ、まいったなぁ」
だから、笑って言ってもなんの説得力もねえって。
やっぱり桜子は人間じゃなかった。
少なからずショックを受けた俺を、桜子は悲しそうに笑って「ごめんね、だまして」と頭を撫でた。
「ちゃんと話すね、私のこと」