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神様の願い事

第2章 一つめは


きっかり5分後。
外で待っていた俺の前に、バイクをふかしながら諒が現れた。
こいつは、いつも時間ピッタリだ。
頭ん中に時計でも入ってんのか、と思う程に。


「よ。時間ピッタリだろ?」


ドヤ顔で、諒は言ってくる。

ドヤ顔は昨日ので見飽きたんだよ、ボケ。

そうツッコミたい気持ちを押し殺し


「そうだな」


とだけ言っておく。
俺の反応が面白くなかったのか、諒は少し膨れっ面をする。
だが、そんなお子ちゃまみたいな行動に付き合っているほど、俺に時間は無い。
バイクのケツに乗り、手渡されたヘルメットをかぶる。


「準備できたか?和也」

「おう」

「じゃ、飛ばすぜ!!」


ブオン、と豪快な音を出し、バイクは走り出した。
昼過ぎの陽射しが照りつけて、肌が出ている部分が熱い。
だが、久々に乗るバイクは、適度な風が受けられて気持ちが良い。

なんで自分のバイクに乗らないんだって?
お前なぁ…察しろよ。
免許持ってねぇんだよ、俺は。

つーか、教習所に通う金があったら、他のことに使ってるわ。
と、信号待ちの時に呟く。
小声で言ったつもりだったが、聞こえていたらしく、諒はクルリと後ろを振り向いてきた。


「なんだよ。何か言ったか?」

「あ、いや…独り言だ。気にすんな」

「ふーん。独り言言うやつって、老けてるらしいぞ」


ケラケラ笑いながら言う諒。
思わず殴りそうになったが、信号が青に変わってしまったため、殴れずじまいだった。
20分程バイクを走らせ、バイトの場所についた。
急ぎ気味でバイクから降り、ヘルメットを諒に返す。


「ありがとな、諒」

「おう、良いってことよ。今度飯奢れよ!」

「…給料出たらな」


俺の言葉に、少し不満げにする諒。

お前と俺のお財布事情の差を考えろ。
給料日前ですっからかんなんだよ、俺は。

まあ、そんなこと言ったらまたブーブー文句を言うから、俺は言わない。
これが懸命な判断だ。
ゴタゴタやっていると、バイト先の社長が仮設休憩所の二階の窓から俺を呼んだ。
諒と別れ、ノックをして社長室に入る。


「早かったな、三谷」

「はい。遅れてすいません」

「良いんだよ。お前は遅刻常習犯の笠原と違って、普段はきっちり来るからな」


笠原 雅樹 (かさはら まさき) は俺の同期。
かなりの遅刻魔だ。


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