第10章 恋愛論Ⅹ
「く、久世くん…!」
久世を呼び掛ける女子の声に、全員で振り返る。
「篠崎さん、」
振り向いた先にいたのは、篠崎 満(しのざき みちる)。同じクラスの篠崎さんは少し頬を赤くして、胸の前で落ち着かないように指先をいじっている。
「…それ、私も…ついて行っていい?」
「海?」
「あ、いや、図書館、がっ…気になって…!」
「ああ、うん、篠崎さんも好きだよね、本。」
「あ、え…知って…」
「うん、いつも図書室で見かけてたから。」
久世の言葉に篠崎さんの顔がピンクなまま、明るくなる。私は知ってる、この顔の意味を。私が先輩にしていたそれと同じ。
「…そ、うなんだ。」
「一緒に来る?」
「い、いいの!?」
「うん、いいよ、ね、宮原。」