第10章 恋愛論Ⅹ
「そう言えば久世、」
ダンマリだった新田くんが久世に話し掛ける。
「海岸の近くにクーラー完備の新しい図書館出来たの知ってる?」
新田くんの言葉に、久世の耳がピクリと動く。
「新聞で読んだ。1週間だけ、国立図書館から普段見れない資料も預かってるって。」
「ああ、それ。1週間っていったら、ほんとに次の日曜までじゃない?」
「ああ、それから」と新田くんが言葉を続ける。
「日向さん、監視役でチカが来るよ。」
「は、い?」
「俺、夏のせいで女子に悪さしちゃうかも~って言ったら、ついてくるって聞かなくて。」
新田くんの情報に、下を向いて固まる京ちゃんと久世。ほぼ同じタイミングで口を開く。
「ねえ杏、」
「おい、キラキラ馬鹿」
「「は、はい!」」
「私も行こうかな。」
「僕も行く。」
「じゃあ皆参加ということで。」
新田くんがニッコリ笑う。
さすが、モテ男は策士である。