第8章 恋愛論Ⅶ
久世の声は魔法の音色なのか。安心という名の魔法が私にかかると、涙腺が急にもろくなるのはなぜだろう。
「・・・、く、せっ・・・」
「うん、」
「こわ、かっ・・・」
「うん、怖かった。僕も。」
椅子に座ってうつむく私の頭を、あの時と同じように立ったままの久世がポンポンと優しく撫でる。
「良かった、傷、残らないって。」
「・・・う、ん。」
「宮原が嫁に行けなくなったら、僕が困る。」
「なんでよ、」
「なんとなく。」
「・・・精進します。」
「ん、精一杯励んで、死んでも嫁に行って。」
もしも、もしも私に行く宛がない時は
久世さんが嫁にもらってはくれませんか。
なんて思う気持ちは、一体何なんでしょうか。