第2章 恋愛論Ⅰ
現実に戻されるひどい言葉を投げつける目の前の女子。
同じく17歳、高校2年生の日向 京子(ひなた きょうこ)。通称、京ちゃん。
そんな京ちゃんが眉を寄せ、明らかに嫌悪感丸出しの顔を私に向ける。その言葉は恋する乙女に言うセリフでは決して、ない。
「…京ちゃん。恋する私に今、
気持ちが悪いと言いました?」
「キモい」とか「気持ち悪っ」とかじゃなくて、丁寧にと「気持ちが悪い」と言いました?
「杏以外に誰がいるの?
気持ちが悪い人なんて」
「これは一応、私の中の一番可愛い顔だと
自負しているのですが、」
そうよ、昔から言うじゃない。恋する乙女に勝てるものなんて、何にも…
「レベル低いな、可愛さの」
そう言って呆れ顔の京ちゃんが、目を細めて私を見る。ひどい、ひどいよ親友。
「京ちゃん、あなただけよ、
そんな風に言ってくれる子」
「うん、感謝して。
親友だから言ってあげる。
頼むから先輩の前では
鼻の下、伸ばさないで」
そう言われ、そのままの顔を隣にある窓ガラスの反射で確認する私。
「……、気付かなかった。
私、鼻の下なんて伸ばせるんだ」
「うん、恋は盲目って言うからね」
京ちゃん、ことわざの意味が少しズレてる気がします。