第8章 恋愛論Ⅶ
「もうすぐ夏休みかあ…、」
ミンミンとセミの声が遠くで聞こえるクーラーの効いた教室。今や恋する楽しみも無くなった私は、これから来る長い夏休みに不安があった。
「なんだよ、宮原ぁ、楽しい楽しい夏休みじゃないか!」
いつの間にか隣にいた諸星くんが話に入ってくる。
「うん、諸星くんにとっては、ね。」
「なんだよ、寂しいこと言うなって!俺ら友達ダロ!?」
親指を立てて、ウィンクする諸星くんからはまさに「キラーン★」という音がする。
「……」
「久世ぇ!宮原が俺をいじめるぅ~!」
教室の後ろで他の男子と話す久世に諸星くんが大声を出すと、あからさまに嫌そうな顔をして、何事もなくそちらに顔を戻した。
「ちょっと宮原!今久世、俺のこと見た!?」
「うん、嫌そうな顔して見てたよ。」
「やっぱり久世って照れ屋さん!」
「何でそうなるのかな。」