第6章 恋愛論Ⅴ
「もう出ないの?目から出るその汗みたいなやつ。」
「久世さん、失恋した乙女の目から汗は出ません。出るのは綺麗な涙です。」
「ああ、それ涙だったの?へえ、意外。」
「汗出してたら引くでしょ、」
「うん、宮原なら出そう。」
「なんなの、久世、私をなんだと思っていらっしゃるの。」
「僕のおもちゃ。」
「おい、」
久世のおかげでいつもの私に戻れました。問題は何も解決していないけど。
「ありがとう、久世。」
「え?何が。」
何がって・・・、先ほどの光景を思い出して恥ずかしくなる。まだ久世の暖かい、優しい感触が残ってる。
「宮原、顔、やらしい。」
「え!」
慌てて火照った顔を隠す。
「へんたい、」
「ちが」
「帰るよ、へんたい。」
「ちょ」
「遅いな、へんたい。」
「・・・明日からずっとそれですか?」
「悪くない。」
そう言って私を見て少し笑う久世にドキっとしたのは、なぜでしょう。