第4章 恋愛論Ⅲ
「…宮原さん、」
「………はい、先輩、」
「…もしかしなくても、あちらの扉にいる人達って…お友達、だよね?」
入口辺りを見ると扉に隠れて下の方にしゃがむ人陰が2人と、隠れる気もない久世が1人。私と先輩の視線に気付いて、慌てる素振りも見せない彼ら。諸星くんに至っては私に手を振ってくる始末。キラキラ馬鹿、お前部活行けよ。
「……いえ、知らない人です。」
「えっ、だってあれ久世くんじゃ…、しかもあの人、にこやかに手振ってるよ?」
「……、」
もう一度そちらを見る。諸星くんが今度は両手を挙げて左右に大きく振る。
すみません、すみません、すみません。私の友達らしき人達が図書室前でワイワイギャーギャーすみません。くそっ、諸星、必ず沈める!
「…よく見たら友達、でした。」
なんてバレバレの嘘なんだ。
「ふふ、僕も目悪いからよくわからない時あるよ。」
なんて優しい人なんだ。そう思って、スラッとしたお人形のような先輩を見ると、ふんわり笑ってくれた。するとすぐに真剣な顔つきになる。その顔にまた胸が高鳴る。
「宮原さん、実は・・・話したいことがあるんだ。」
「え?」
「…でもそれはここじゃ言えなくて、」
うそ、待って、もしかして、いやもしかしなくても、このパターンは…
「明日、体育館裏に来てほしいんだ、一人で。」
「…え?あ、は、はい。」
「あ、よ、よかった…。じゃあまた、明日。」
「は、い…。」
「待ってるから。」
「・・・はい。」
やだ、どうしよう、
おい、そこのうるさい私の友達連中、私…とうとうハッピーエンドを迎えるようですけれども。