第17章 episode Ⅳ 新田 光
「てか歳は18ってことにしていい?
あ、無理あるかなあ。いやでも、
光大人っぽいし、いけるよね?」
「……」
「あ、もちろんお酒とかはダメだからね!
ちゃらんぽらんに見えて俺そういうのは
親ばりにでしゃばるからね!」
「………」
「あー!そういえば
紹介したいやついるんだった!
そいつも昨日スカウトしてね、
あ、大丈夫、
そっちはピアノが上手くってさあ、
顔もいいんだよ。しかも、同じ14歳!
親友になれば?
あ、もちろん、光も格好いいぜ!」
「…………」
「そうだなあ、俺のことは
涼太さん、ってよん「りょーちん」
「……え、今りょーちんって呼んだ?」
「うん」
「しかも、ため口?」
「うん」
「だいぶ歳上なのに?」
「うん」
「光…………よし、それでいこう!」
「……………(アホだ)」
りょーちんがファミレスで「俺の店で歌って」の詳しい内容を教えてくれた。
学校が休みの土日、ランチ時の時間帯に何かないかということで、バンド演奏を考えたらしい。ドラムとギターができるスタッフはいたらしいが、ボーカルとピアノを探していた、とのこと。
「なんで俺なの」
歌は…好きだけど、別に歌手になりたいとか、人前でさえ歌ったことはない。
「ん?インスピレーション?」
「は?」
「俺のそういうの当たるのよ?」
「歌、下手だったらどうするの」
「大丈夫、なんか、自信あるから」
これこそ、根拠のない自信。
「…なんか、よくわかんねえけど、」
初めて会った、身元もよくわからない男になぜ心を許したんだろう。自分でもよくわからない。
「いいよ、やるよ俺」
悪いことを考えた子供のように、嬉しそうに笑う目の前の"大人"。俺の知るその人たちとは少し違う、その人。
「よっしゃ!決まり!
あー、一仕事終えたら腹減った!」
「俺も腹減った!」
「光何食う?」
「ステーキと寿司とポテトとパフェと…
え?りょーちんの奢りだって?」
「お前…ほんとに初対面かよ」
俺は
洸がいない
そんな世界を作りたかったんだ。