第15章 恋愛論XII
すう、と静かな寝息をたてる久世のサラサラな色素の薄い髪の毛に少しだけ触れる。
久世、わたしもう、
久世が誰よりも
「…私の一番です」
「気づくの遅い」
「え!」
近すぎる視線に、もはやどこを隠せばいいかわからない。視線を外しても、久世しか見えない。
一度、視線が合うと優しい顔して、小さく笑う久世に心拍数が早くなる。
久世の時々見せるその顔は反則だ。
「た、狸寝入り!」
「宮原がグズグズするから。」
「グズグズって!」
「うるさい、」
熱いのと、嬉しいのと、恥ずかしいのと、色んな気持ちが入り乱れて、なにがなんだかわからない。
何も言えない私に、久世の抱く力が少しだけ強くなった。
「みゃあ、」
「は、はい、なんでしょう。」
顔が近くて、久世の胸に顔を埋めるように下を向くと
「僕から離れるなんて許さない」と言われた。
ケンカを売るような強い口調なのに、言ってることは砂糖いっぱいの生クリームをそのまま口にいれるくらいの激甘で。
「久世ってもしかして…甘党男子ですか。」
「甘いのは嫌いじゃないけど、
僕ってどちらかと言うと辛党じゃない?」
「…確かに」
優しいだけの久世なんてなにか企んでるに違いない、そんな風に思っていると、「ばかだね」と言われた。
「みゃあだけだよ、僕が甘いのは。」
その悪戯に何も返せない私を久世はギュっと強くだきしめて、「あー、楽しい」と嬉しそうに笑った。
きっと久世は
私を糖尿病にさせる気です。