第15章 恋愛論XII
耳元でかすれる声が、やけに色っぽくて。
私は言葉を失ってしまう。
「何か言いません?」
「な、にかと、言いますと…」
「…いや、やめた。」
「え!?」
抱き締められたまま、離してくれない久世。表情が見えないせいで、言葉の意味もわからない。
「今はいい、」
今度は私の体を離して、視線を合わせてくる。
くっついたり、離れたり。もう、頭も気持ちもこんなに久世に振り回される。
「僕のことが一番な宮原がいいから
今はいらない。」
どれだけ上からなんだ、久世さん。
「……、」
私をじっと見つめる久世から目をそむけと、小さいため息をつかれた。
「疲れたから寝る。」
「……は、はい。どうぞ、…うわ!」
急に腕を引っ張られ、ベッドの中に引きずり込まれる。
「おやすみ」
「……(い、いや!寝れないんですけど!)」
私を抱き枕のようにして目をつむる久世の顔。 黙っていれば、口さえなければ、なんて思っていた数ヵ月前。今はこの口がないと、私が好きになった久世ではない。