第3章 恋愛論Ⅱ
私の学園生活、一番楽しみな時間がやって来た。
「京ちゃん、では行って参る」
「うん、
くれぐれも鼻の下には気をつけて」
「かしこまりました」
校舎裏の焼却炉、私はゴミ箱を抱えて廊下の階段を降りる。
しかし、なぜゴミ箱ってのはこんなに大きいんだ。階段を下りる時、足元が見えなくてどうしても歩きづらい。いや、これも今からある楽しみを迎えるための試練なんだ、と自分に言い聞かせて。1つずつ階段を下りる。
「その効率の悪さ、どうにかしたら?」
「く、久世さん」
階段の上の方から顔だけ出した久世が私を見ていた。
「ピョコピョコピョコピョコ、
うっとおしいな、それ」
「そうやって思うなら、
手伝ってはくれませんか」
「宮原、だから馬鹿なんだよ」
「なぜです」
「僕と宮原が
仲良くゴミ箱持って焼却炉行くの、
想像してみてよ」
私は言われた通り、くそのシチュエーションに浸ってみることに。
久世と私が仲良く…
先輩に遭遇…
先輩から隣の男は誰だと問われる…
ああ、なるほど!つまりそういうことか…!
「見事なまでに先輩は何も感じないだろうね」
「え、そこは
ヤキモチ妬かれるだろ?でしょ、」
「いや、何も思われなさすぎて、
見るのが辛い」
「久世、引くかどうか、1回やってみよう」
「心臓だけは強いよね。そこは尊敬」
いやいや、そんな会話してる場合じゃないんですって、久世さん。
「あ、もうすぐ掃除の時間終わっちゃう」
「間に合うの、それで」
「…び、みょう」
「貸して、」
久世が階段の上からピョンと飛び降りて、急に私の前に降り立った。
「…わあお、なんと見事な」
「途中まで、
持っていってやらないことも、ない」
「え!いいの?」
「間に合わなくなったのは
半分僕のせいだから」
なんて言うと私を待たずに先へ行く彼。
「あ、ありがと!」
後ろ姿にそう言ってチラッと視線を送る彼が、いつものように「ん、」と笑いもせず相槌を打つ。
久世は責任感が強いところがあるのです。