第15章 恋愛論XII
「あれ、久世は?」
チカちゃんの言葉で、隣の席に目をやった。補講がいつものように始まる、出席確認の時間。隣の席で私に数学を教えてくれていた久世の姿が見当たらない。
「宮原、なんか聞いてないの。」
え、なぜ私の管理下にあるのですか、彼は。昨日の海で帰りは一緒じゃなかったし、昨日の今日で連絡はとってないし、なんの情報もありません。
「いえ、何も。」
「ケータイあんじゃん、ケータイ。」
「や、先生。授業中にケータイで連絡しろってのか。」
「便利な世の中だよね。」
いや、そういうことでは決してない。
「それだったら私より新田くんでは?」
「え?なんも入ってないよ、連絡。ていうか、久世はこういう時連絡してくる人間じゃありませーん。」
確かに。誰にも何も、肝心なことは言わない久世。だから少し寂しくなる。
「…まっ、いっか!じゃあ授業始めまあす。」
結局始めるのか、適当教師。