第14章 episodeⅢ 小出政親
先生はそのタバコを受けとると、
「吸わないのに持っているの?」と聞いた。
「いや、吸うけど学校では吸わない、かな。
シュンに怒られる。」
シュンの名前を出すと先生は驚いた顔をして「ああ、あの可愛い子ね」と笑った。
「先生、シュンみたいな可愛い系もいけるの?」
「人を狩人みたいに。」
「狩人って、ピッタリ。」
「なに?私にはちかだけよ、って言って欲しいの?」
ほんとにこの人は悪い人だ。
「言ってくれんの?」
「夜だけね。」
「いつ?」
「明日?」
「明日は、」
あれ、明日はゆなちゃんと約束したっけ。
「彼女?」
「いないよ、そんな子。俺モテないもん。」
大体女の子が喜ぶ言葉。それをわかっててわざと言ったのに。
「私、モテる男が好きよ。」
やっぱり先生には通じない。
「嘘です、モテます僕。捨てないで下さい。」
「ふふふ、ちかが好きな方、選びなさい。
若くて可愛い子か、もう30近い悪いおばさんか。」
自虐的に言うそれは、自信があるような、全く思ってもいない言葉。
「夜、行っていい?」
「ふふ、」
俺は最初から先生にハマっていたかもしれない、今になってはそう思う。