第13章 恋愛論XI
「…ガチでバカだな、お前。」
「……はい、」
「大バカだな、お前。」
「…し、知ってます。」
「なんで譲っちゃうのかな。」
「違います、そんなんじゃないんです。」
譲るなんて、今の私にそんな余裕はありません。私はただ、嫌な自分から逃げただけ。
「…こんなの、初めてで、どうしていいのかわかりません…」
「僕に言われてもね。」
「…すみません。」
「は?お前、まさか泣くの?」
「なっ、泣きましぇん!」
「…しぇん…って、泣きながら言うなよ。」
「…っふ、す、すみません。」
「ほら早く帰るぞ。」
「え、先輩大丈夫ですよ。すずちゃん探して下さい。」
「すずはシッカリしてるから。お前と違って。」
「…は、はい。」
「…お前のが手がかかる、マジめんどくせぇ。」
「…すみません、」
「あー……、宮原。」
「は、はい!」
「飯食って、それやめろ。お前がそんなんだと久世も楽しくないだろ。お前はお前のよさがあるんだから…誰かと自分比べてダメになるなんて、ほんとのバカだ。」
先輩の声が優しくなる。
「僕の友達の宮原は、そんな弱くないだろ。」
「……せ、せんぱぁ「うっせえ、近寄んな、はげ」
私のグシャグシャになった顔を見て、先輩が吹き出す。
「まあ、上手くいく保証はしてないから、失敗しても恨むな。」
「いや、恨んで恨んで、孫の代まで呪ってやります。」
「お前、恩を仇で返すタイプだな。」
「はい!かつどん、食べたいです!」
「言っとくけどお前みたいながさつに、恋する資格はないからね。」
その日のヘコんだ私の気持ちは、先輩とカツ丼のお陰で見事復活した。
と同時に、この嫌な気持ちも恋をしている証拠なのだと知った。
私は久世に恋をしている、らしい。