第17章 水に濡れていれば真綿は燃えはしない。~情愛~(及川・岩泉)
「うち、寄っていかない…?」
一ちゃんも徹ちゃんも驚いた顔をしている。
それもそうか、私から誘うなんて今の関係になってからは初めての事だ。
「ちゃん…いいの?」
「…………」
「…私ね、すごく怖かったの……二人とあんな風になるなんて思ってもみなかったから」
二人とも黙って私の話を聞いてくれている。
首筋に汗が伝う、暑さのせいなのか話を続ける事への緊張からなのか…掌にもじんわりと汗が滲んでいた。
「でもね、一ちゃんにあの時言われて気付いたの」
「飛雄の事…?」
「うん」
真っ直ぐに二人を見据える。
私の大切な人達。
ずっとずっと、見守っていてくれていた事にやっと気付けたの。
「二人が側から居なくなる事を考える方がもっと怖かった…!」
「……ちゃ…って岩ちゃん!?ずるいっ!」
気付けば一ちゃんの腕にすっぽりと包まれていて、安心する匂いを感じる。
「はじ…めちゃ……」
「離れるわけねぇだろ…バカ」
「もー!岩ちゃんこんな時ばっかりなんで速いのさ!ちゃん、俺もっ」
徹ちゃんが一ちゃんごと私を抱き締める。
もちろんすぐに一ちゃんに怒られる。
「暑苦しい!離れろクソ川!!」
「ひど!俺だけハブ!?」
いつもの、光景。
いつもの、私たち。
「ふっ…ふふ…っ」
「ちゃん!笑ってないでハグ!ハグして!」
それがなんだかとても嬉しかった。