第16章 50音の最初の2つを明日君に届けます。(月島蛍)
(……ちょっと買いすぎたかな…うぅ、反省)
迎えに行く前に買い出しをするためにスーパーに寄る。
りんごやゼリー、冷却シートなどあれもこれもと選んでいたらそこそこの量になってしまった。
私がスーパーを出て反省している頃、私の早退後の教室では思いもよらぬ事が起きていた。
「あれ?ツッキー、どうしたの?」
「山口、僕体調悪いから帰る」
「えっ?えっ?」
「…ノート取っといてくれる?」
「あ……うん、わかった」(これは何も聞くなって顔だよね…)
小学校の前の公園に見知った顔を見つけて私は思わず声に出して呼んでしまった。
「月島くん?!」
「…そんな大きい声出さなくても聞こえてるケド」
「ごめん…じゃなくて!どうしてここに……」
「僕の予想通りだったら、帰れないと思って」
「え…?」
「やっぱり予想は当たってたみたいだし」
そう言って月島くんは私が手に持っているスーパーの荷物を指差す。
「その荷物持ったままで…どうやって弟抱えるつもりなの」
「あ…」
月島くんはハァ…と溜め息をついたから呆れられたかと思ったのに、顔を見たら少し嬉しそうに笑っていたから私は不思議な気持ちだった。
「月島くん…なんでちょっと嬉しそうなの?」
「…!//はぁ?…何処が嬉しそうに見えるワケ?!」
「え?!違った?…ご、ごめん!」
「……別に、お、怒ってるわけじゃ…ないし…//ホラ、迎えに行って来なよ…荷物、ここで見てるから…」
「うん…?ありがとう、行ってきます!」
彼の顔が普段からじゃ考えられないほどに赤かった事は、私が背を向けた後の話だった。
保健室のベッドにいた弟はぐっすりと眠っていた。
弟を抱きかかえ、養護の先生にお礼を言う。
担任の先生も保健室にちょうど来てくれていた。
「さん」
「はい?」
「これ、貴斗くんがお姉ちゃんに見せたいって言っていたのよ」
「これは…あいうえお表…?貴斗が書いたんですか?」
「えぇ、今日の一時間目の国語でね、いつもお姉ちゃんが字を教えてくれるって自信満々に書いていたのよ」
「…貴斗が……ありがとうございます、先生…」
「お大事になさってね」
先生にペコリと頭を下げ校舎を後にする。