第14章 水に濡れていれば真綿は燃えはしない。~約束~(及川・岩泉)
「……一ちゃん、徹ちゃん…私、ね…中学校の頃から…その…」
言い辛そうに唇を噛み締め、小さなその手は真新しい制服のスカートを強く握り締めていた。
「…か、影山君が、好きで……だから…」
「………」
「……だから?」
飛雄が好きって隠してるつもりだったんだろうけど知ってたよ。
黙ってちゃんの話を聞く岩ちゃんの隣で俺は追い打ちをかける。
『だから』の先は何?
『だから』気持ちには応えられない。
『だから』俺達は好きじゃない。
『だから』一緒にいられない。
どの続きも否定の言葉に結び付くしかない事は分かってる。
それでも俺は君を手放せない、きっとそれは岩ちゃんも同じ。
「だから…ね…!あっ……!!」
床に座っていたちゃんの腕をベッドにいた岩ちゃんが引いて、華奢な身体は岩ちゃんの腕の中にスッポリと収まる。
ベッド
「岩ちゃん、抜け駆けー?」
「ウルセェ」
俺はちゃんの言葉を聞こうとしてたのに、岩ちゃんは聞きたくなかった…って事でしょ?
「は…はじっ…一ちゃん!?」
モゾモゾと岩ちゃんの腕の中で藻掻く姿が堪らなく可愛かった。
ちゃんを抱き締める岩ちゃんと目が合った。
そうだね、
俺達の愛し方はこれで良いんだよね。
そんな風に確認し合えた気がした。
「ちゃん、手放せなくて…ごめんね」
近付いてそう囁くとちゃんは目を大きく開いて顔だけ俺の方に向けた。
ベッドに膝を付くとキシッとスプリングの音が小さく聞こえた。
白くて綺麗な頬を指で撫でるとビクリと肩を揺らす。
それと同時に岩ちゃんが抱き締める腕に力を込めた。
これから何をするのか分かるんだね、もう高校生だもんね。
「一ちゃん…徹ちゃん……」
「泣くな」
「怖い事はしないよ、するわけないだろ?だって俺達、ちゃんが誰よりも大事なんだから」
ベッドのスプリングの音が大きくなる。
泣かしちゃうかも知れないって言うのに、
俺の心は気持ち悪いくらいに落ち着いてるんだ。