第14章 水に濡れていれば真綿は燃えはしない。~約束~(及川・岩泉)
俺達が決めた約束事は四つ。
他人にバラさない事。
二人きりにならない事。
キスもそれ以上も必ず三人でする事。
愛の言葉を囁かない事。
もしも俺か岩ちゃん、どっちかがこれを破ったのなら。
この関係は崩壊する。
幼馴染みと言うこの関係が狂い始めたのはいつだった?
二つ年下の君は俺と岩ちゃんにとって守りたい対照だった。
小学校にあがっても、中学校にあがっても、その関係も想いも何一つ変わらなかった筈なのに。
高校生になった今も、だ。
「なぁ、」
「なぁに、一ちゃん」
「俺、お前の事好きだわ」
「ちょっ!岩ちゃん?!イキナリ何を言い出すの!!」
高三の春、俺達の後を当然のように追いちゃんは青葉城西へと入学した。
入学式を早々に終え、帰宅途中にちゃんの家に寄る。
放課後に誰かの家に寄るこの流れ、これもいつも通り。
ただ一つ違ったのは、岩ちゃんが長年心に秘めてきた
ちゃんへの想いを彼女に突然伝えた事。
岩ちゃんがちゃんを好きって事なんてとっくの昔に分かってた。
俺も同じ様に彼女が好きだったから。
「は…一ちゃん?ホントに…言ってるの?」
「冗談で言うかよ」
待って、
俺を置いていかないで。
「ちゃん」
「徹ちゃん…」
そんな助けを求めるみたいにこっち見ちゃってさ…。
ごめんね、俺は助けてあげられない。
「ごめんねちゃん、俺も君が好きだよ」
そんなに困った顔をしないで。
もう後戻りは出来ないんだ。
元の関係には戻れない。
「及川…てめェ……」
岩ちゃんは一瞬驚いた顔を見せたけどすぐにいつもの仏頂面に戻った。
膝を抱えて小さく座っていた彼女の口から小さく漏れた声は震えていた。
それは、俺も岩ちゃんも望まない答え。