第14章 水に濡れていれば真綿は燃えはしない。~約束~(及川・岩泉)
「……ちゃん、寝ちゃった?」
「んあ…?あぁ…」
俺と岩ちゃんは泣いて嫌がる彼女を無理矢理に抱いた。
痛みが快感に変わるほど、何度も何度も。
一度線を越えてしまったらもう躊躇わなかった。
身なりを整えた後、岩ちゃんがちゃんの目尻にそっと指で触れる。
涙の後が、うっすらと見えた。
「なぁ、これで良かったのか」
「何、岩ちゃん後悔してるの?」
「いや…そうじゃねぇけど…………泣かせた」
「俺は遅かれ早かれこうなるって思ってたよ、ちゃんが飛雄を好きになった時からね」
ちゃんが俺達のどっちかを選んでいたらまた違った結果だったかも。
だけどちゃんは俺達を選ばなかった。
「大体、岩ちゃんがいきなり告白しちゃうからじゃん」
「なんつーか……おれらと同じ制服着てたし…もう中坊じゃねぇと思ったらよ…」
「まぁ、確かに制服可愛かったよね」
俺は疲れて眠るちゃんに布団をかけ直して立ち上がる。
「さてと、岩ちゃん帰りますか」
「…おう」
目が覚めたら彼女は夢だったと思うだろうか。
明日から口を聞いて貰えないのだろうか。
そんな事を考えてるのに何故か笑みが零れてしまう。
「ねぇ、岩ちゃん約束しよう」
「約束…?」
「そう、俺達三人の約束だよ」
窓の外には桜が綺麗に咲いていて、時折風に煽られて花びらが舞っていた。
「岩ちゃんが破ったらちゃんは俺の」
「はぁ?」
「俺が破ったら…ちゃんは岩ちゃんのだ」
「…だから何なんだよ」
麗らかな眩し過ぎるこの春の日に俺達が交わした四つの約束。
それは鎖のように堅く冷たいものではなくて、柔らかな真綿。
けど確実に俺達を締め付けるんだ。
柔らかで苦しいそんな僕らのルール。
to be continued…