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High Q!!!(ハイキュー短編小説)

第13章 瞼の裏の暗闇を星空に変えてくれたのは君だった。(縁下力)


強く閉じた瞼をそっと開けると、目の前には見知らぬ女の子の顔があった。

「うわっ…!」

そんな事全く予想してなかった俺は座っていたベンチから落ちそうになる。
咄嗟に彼女は俺の手を掴みそれを防いでくれた。

「あ…りがとう、ございます…」

「私こそ、驚かせてごめん」


同い年位だろうか。
いや、少し年上…?

目の前で笑う彼女は可愛らしさの中にも何処か大人びた雰囲気があった。

「こんなに綺麗な夕焼けなのに、君がすごく辛そうな顔をしてたから」

「………いや、俺は」

「してる」

「!」

「少し前の私とおんなじ顔だからわかる」


彼女をよく見て気が付いた。
彼女の左足の膝には頑丈そうなサポーターが巻かれている。

「怪我、してるんですか…?」

「ん?あぁ、うん」

靭帯が断裂しかかってると言う。
そしてもうすぐ手術を控えてるとも教えてくれた。

「もう、跳べないんだ」

「え…?」

「高跳び」

「陸上部、なんですね」

「うん」

「でも、手術受けたらまた復帰するんじゃ…?」


俺がそう言うと、彼女は少し寂しそうに笑って俺の隣に腰掛けた。

「そうしたいけどね、間に合わないんだ…君は、えっと…」

「あ、縁下力…烏野高校一年です」

「私は、青城の三年生」

「!…じゃあ先輩ですね」


思った通り、年上だった。
間に合わないと言った意味も理解できた。
大抵の高校の三年は夏を過ぎれば引退する。

怪我の状態を考えてたら彼女はもう復帰は難しいのだ。

「力はさ、どしてそんな顔してるの?」

「俺は…」


部活に戻りたくても戻れないこの人の前で、自分から逃げ出して来た俺はすごく格好悪く思えた。
自分の小ささに膝の上で拳を握り締めた。

「さんの…」

「でいいよ」

「あ、ハイ…さんの前で話すには情けな過ぎるんですけど…」

「うん?」



辛いから、逃げ出した。
そんな俺の話をさんは笑わずに、真っ直ぐに俺を見ながら聞いていた。
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