第2章 ここが校舎裏の駐輪場である事をお忘れなく。(月島蛍)
「…日向、さっきと何してた?」
「え?何って何が??」
「いや…やっぱりいい」
その後の部活は何となく元気が出なかった。
具合悪い?と潔子先輩にも心配を掛けてしまった。
情けない…。
「じゃあ、明日の朝練はいつも通り7時から!遅れんなよ!」
「「お疲れっした!!」」
澤村先輩の締めの言葉で今日の部活が終わる。
と言っても日向や影山はこれから更に自主練習するのが日課で、私もそれに付き合うのが日課。
散らばったボールを拾い集めてると後ろから声を掛けられる。
「ねぇ、ちょっといい?」
この…冷気を感じさせる声は……
「蛍…」
制服姿に着替えた蛍の姿。
着いてきてと言われるがまま、私は蛍の後に続く。
いつもと変わらない様に見えるのに、どこか違っても見える。
「蛍…?」
すっかり人気のなくなった駐輪場に二人。
蛍は残されたままの自転車にもたれるようにして立つ。
「はさ、日向が好きなの?」
「………は?」
そこで言われた予想外の一言。
何を、何を言い出すの…?!
否定も何も言えないくらい…ヘコむ……。
「で?は何て言ったの?月島に」
「一言……バカって…」
そのまま走って逃げて、体育館に戻った。
弱音のような愚痴のような話を私はやっぱり日向にしてる。
「なぁ、今からでも遅くないんじゃん?この際もう怖いもんなしだろ!」
日向は時々凄いことをサラッと言ってのける。
当の本人は当たり前だろって顔をしているのだけれど。
その日向の言葉に拳をぎゅっと握りしめる。
「…そうだよね、この際当たって砕けろだ!」
「おー!その意気だッ」
「とは言ったものの…さすがにもう帰っちゃったよね、蛍…」
日向と別れ、さっきまで蛍と話していた駐輪場へと恐る恐る戻る。
校舎の影からそっと覗くとやっぱりそこにもう蛍の姿はなかった。